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スケッチ 2018/08/23

本当はチャーハンの気分だったのだが、隣の客のつけ麺が羨ましくなった。

 

「つけ麺ひとつ」

 

エイヨッ!と威勢のいい声をバイト君が返す。いや、正社員かもしれない。一月ほど前までは小太りのメガネのおじさんだったのだが、気がついたら細身に丸坊主のお兄さんになっていたので、世の中はわからない。

 

「台風は強い勢力を保ったまま…」「先の西日本豪雨の影響で多くの事前避難者が…」「大雨に慣れてない兵庫県では…」

 

台風19号は今夜遅くにも最接近するらしい。ニュースはもっぱらその話だ。先の豪雨のせいか、早めの閉店をする店が増えたり、終電が繰り上がったりしているらしい。いいことだ。無理はなんの得にもなりはしないのだから。

 

「つけ麺お待ち」

 

もう帰った隣の客がやっていたように、あえてつけ汁を丼へ流し込んで、油そばのようになるかと思ったが、なるほどコツがいるらしく全くならない。ただの固め濃いめラーメンになってしまった。食えなくはないが、なんとも収まりは悪い。単純に食べにくいし。

なんてことを思っているうちに食べきってしまうのも、また人の行いだろうか。

 

お金を払い外に出れば、空はまだギリギリを保てていた。この上大雨になど逢いたくはない。駅までほど近くとも足は早足だった