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「Dice&Deal」のはなし

当日なので拙作「Dice&Deal」の話をしましょう。本作品はC97(2019冬コミ)にて頒布した作品です。

詳細はモーメントとかにまとめてあるので、そちらを観てください。

 

【12/30 誤字を修正し、下部に追記を入れました】

 

さて、この作品の起こりを掘り起こしてみましょう。確か、ノイタミナの「【C】」という作品が根源だったはずです。あの作品もお金を使ってバトルする話でした。

世界観は確か誰かとリプを投げ合って決めたような気がします。ほんとは良くないんですがあんまり世界観を掘り下げないタイプです。

 

ダイスを買う、売るという要素は、自分が感じていた既存TRPGに対する疑問が主だったように思います。

どの作品もだいたい複数のダイス(さいころ)を振り、何点以上が出たらクリア、というようなが一般的な判定方法です。

ですが、例えば目標が12点で、4つのダイスを振ったとき全て6だったとき*1、6が2個あれば事足りるはずです。そうして後々失敗したときに、「あのときの二個があればなぁ」みたいなことになる、というのが常でした。

 

というわけで、自分の「運」そのものをストックすることができる、というのを要素としてというのが当初の設計でした。ちなみに、先程の「【C】」になぞらえ、当初はPvPの予定でした。しかし、ダイスを奪う、というのはたぶん喧嘩になるだろうな、ということでやめた、という経緯があります。

 

また、「ダイスの価値」が不平等になることも懸念でした。たいていのゲームでは目が最大のものが絶対成功、最小のものが強制失敗としてデザインされています。また、「n以上で成功」というデザインをする以上、大きい目ほど価値が高く、小さい目は低い、となるのは必然でした。

 

それを崩すために、「絶対成功の目は自分で決めて」というルールを加えました。根底に「出目ひとつに対する確率は常に同じ、六面体なら1/6だし十面体なら1/10」というぶん投げた確率論を敷いている、よく考えるとそれはねえだろというようなルールでした。

 

アルファテストをして細かな調整をした結果、思ってたより上記の「絶対成功を自分で決める」ルールと「ダイスを買い上げる」というルールが相性が良いことがわかりました。

 

まず、ダイスの価値がばらけるので売買が促進されました。それぞれに価値比重が違うので「あの人にはいらないけど自分は欲しい」ということが多く発生し、ゲームの根幹の要素に触れる機会が多くなりました。

 

また、アルファテストを通じて「ダメージダイスにも買った出目を費やして良い」としたことで、出目の価値が底上げされました。どんな出目も、少なくともダメージに使えるという以上、腐ることが大幅に減りました。

 

加えて、案外大きい出目ばかりが便利というわけでもない、ということもわかりました。あと3足りない、という時に10とか9とか出すのはなかなかもったいないものです。しかして買ったダイスが1や2ばかりのときは2つも払わないとならず損が大きい、ということが起こるわけです。

 

予定外の功が「暇な人が生まれない」でした。昨今のシーン制と呼ばれるシステムでは、プレイヤーそれぞれが主導となるシーンが順繰りに回される、という都合、自分が主導でない時は多少暇、という懸念がありました。

ただ、このダイス売買システムでは判定の時に誰もが干渉できるという要素がある以上、暇になることが少ないという利点がありました。

 

そんなわけで、ダイスを売り買いするというゲーム要素は2つのシステムの化学反応で昨今にないものへと昇華されました。「1ターンが重い」という弱点が付与されましたが、これに関しては諦めました。判定のたびに価格交渉と売買が行われる以上重くなるのは必然です。そこをウリにしてる以上、下手なシェイプアップはゲーム性の崩壊を招くと思ったわけです。

 

さて、ゲーム性は担保されました。他の要素にいきましょう。キャラメイクは、当初からステータスの決め方をある既存TRPGから参考にする、と決めていたのですぐ決まりました。

また、「【C】」を参考にし、それぞれのキャラクターにバトルを担うパートナーをつけるようにしました。使うスキルは弱中強の3つ、それぞれにリソースを注ぎ込んでスキルを使う、リソースはライフと結びついている、というあたりのも【C】からです。

こうみるとキャラメイクはほとんど【C】ですね。シンプルなデザインで搭載にほとんど悩まなかった記憶があります。

 

シナリオの方式は「インセイン」を参考にしました。カード式にすることでシーン同士のつながりと広がりを視覚的に見やすくする狙いがありました。

もともと「Dice&Deal」はPvPでしたが、協力性にしたことでシナリオの要素が必要になりました。先ほどのダイスを買う、という要素の都合、先が見える方が良いだろうというのがカード式の狙いです。

 

これも想定外の要素として「カードごとにシーンを描くので描写が楽」「特殊な判定要素やシーンごとの特殊ボーナスを組み込みやすい」という部分が見つけられました。本ゲームとは相性が良く結果としてはさらなる良い化学反応が見られました。

 

結果として様々な要素が絡み合ったお陰で、ゲームとしては良いものになったのではないかと思います。もちろん、完璧だとは言えません。バランスは多少大雑把ですし、シナリオの書き方のコツも別途リファレンスが必要です。サンプルは回し切り*2なのでシナリオ集のようなものもいるでしょう。

 

ただ、それらを踏まえてなお、面白いものに仕上がったと思います。損はさせないつもりです。コミケ、皆さんのお越しをお待ちしています。

 

【12/30 追記】

当日は多くの方にご来訪いただき、本当にありがとうございました。

 コミケは自サークルとしては初参加、TRPGもきちんと印刷所製本をしたものはDice&Dealが処女作です。それでも40部ほどを手にとっていただくことができ、大変嬉しく思います。

 

打ち上げの際、「TRPGはダイスを振ることがメインじゃないはずだ」という旨の話を売り子に語りました。後になって、この要素がかなり思想の根っこにあるな、ということに至りました。

 

TRPGは、ダイスを振って買った負けたを決めるだけのゲームではなく、それはあくまでも「ツールのひとつ」だと思っています。Dice&Dealでは、そこへ真っ向から手を入れ、ダイスを売り買いして操作する、という形に仕上げています。

それは、一種の『当たり前』へ喧嘩を売りにいった部分があるといってもいいのではないかと思っています。

 

ゲームとは「体験」だと自分は思っています。それがどこに宿るものなのかは人それぞれですが、同じようなものでは同じような体験になってしまうのではないか、が正直な思いです。

なによりも、常識を覆せるならそうしたい、というのが、システム屋の本音です。

 

そうした部分も含め、Dice&Dealが皆さんにとって「良い体験」になることを願って

*1:大抵この時は「クリティカル」と呼ばれて自動的に成功します

*2:一回やったらネタバレで2回目がやりにくいやつ